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南柯そう/仲村のなんとかその日暮らしログ

サトコとナダと今のサウジアラビア。

サトコとナダと今のサウジアラビア。



ラジオを聴いていたら興味深い内容が。近年のサウジアラビアの社会情勢や改革の内容を報道したコーナーで、私にとっては漫画「サトコとナダ 」のことを思い出したんですね。

サトコは日本人、ナダはサウジアラビア出身で、ともにアメリカの大学に入学した留学生同士。互いに故郷から遠く離れたアメリカの地で、たまたまルームメイトになった二人は、異なる文化や風習に向き合いながら無二の親友になっていく……という日常ストーリー。

物語自体はフィクションですが、作者ご自身の留学体験とムスリム監修もあり、イスラム文化のことを、そしてイスラム文化からみたそれ以外の世界のことを、丁寧に描いた描写がとっても素敵な漫画です。

で、主人公の一人のナダはサウジアラビア出身で、故郷の法律や慣習に触れた描写も豊富です。有名な話として「サウジアラビアの法律では、女性は自動車免許を持てない」も漫画の中で描かれており、今回のラジオでは「近年になって法改正されて取得可能になった」と説明されており、思わずこの漫画のことを思い出しました。

さらにラジオでは、ムスリム女性の特徴でもある「ニカブ、ヒジャブ(顔や頭髪を覆い隠す女性用の被り物)」にも触れており、おおむね「強制されていた過去もあるが、しかし服飾文化として現地には根付いているものでもある」とも説明されており、「それもサトコとナダでみたやつだ!」と思わずびっくり。

そういうエピソードが楽しい一方で、これらは独裁政治を敷く現王朝による急進的改革のたまものであり、それ以前に民衆運動として反発していた人たちは近年まで投獄されていた……という、サウジアラビア社会の矛盾についての指摘も。これ以外にも現代に残る社会上の問題にも触れています。

現代の中東とは、古代からの文化を今も色濃く残しながらも経済的に発展するユニークな文化圏ながら、制度上ではまだまだ矛盾が大きく、特に若い女性が生きやすいとはいえない社会で、その中で彼女たちはどう生きるのか? ……という主旨は、まさに「サトコとナダ」で描かれていたテーマでもありました。

ナダは故郷の矛盾も知りながら、それでも自分の夢に向かって邁進するパワフルな女の子で。それを間近で見たサトコも、いかにもなおとなしい日本人気質だった性格が少しずつ積極的になっていく。

私の中でキャラクターのサトコとナダとは、「この世界のどこかで生きている友達」のような距離感にあって。漫画を読み返すたびに「どうか彼女たちが、彼女たちのような人たちが、少しでもよりよく生きられる世界になりますように」と思わずにはいられない存在です。

たまたま聞いていたラジオを通じて、また少しそういう気持ちになりました。
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