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南柯そう/仲村のなんとかその日暮らしログ

switch「超探偵事件簿 レインコード」をクリアしたので感想書く

switch「超探偵事件簿 レインコード」をクリアしたので感想書く

クリアタイムは、20時間ちょっと。サブクエストは全部消化し、キャラクターたちのサブシナリオは集めはするも未見状態でこのくらい。

超探偵事件簿 レインコード



同スタッフの過去作かつ代表作であるダンガンロンパシリーズは1・2・3はクリア済み。スピンオフやアニメは未見のゆるユーザーです。発売日に予約して買って、いろいろ片づけてようやくこの連休に遊べました。

ではネタバレ感想いってみよう。



すべての記憶をなくして目覚めた主人公が、常に雨の降る閉鎖地区「カナイ区」に導かれ、謎のマスコット兼ヒロイン「死に神ちゃん」と優れた推理力と超能力を持つ「超探偵」たちとともに、超巨大企業と世界を巻き込む未解決事件に挑む……という、ミステリーAVGです。

まずこの世界設定が良かったですね。雨の降りしきるネオンが光る街中で、マントを着込んだ小柄な主人公がとぼとぼと歩いていく。この絵面だけでわくわくするし、入り組んだ街の雰囲気が抜群でした。

ストーリー面でも、特に終盤で明かされる真相は文字通り足元が崩れ落ちるような衝撃があり、街の蠱惑的な雰囲気も相まって進めるたびにくらくらする楽しさがありました。

基本的なゲーム構造は、街のどこかで発生した事件に駆け付け、調査を重ねて真犯人を突き止める……というオーソドックスな探偵もの。

そこに本作への独自性を与えているが「謎迷宮」というシステム。主人公が現場検証や聞き取りを終えた後に、死に神ちゃんの導くままに「事件の謎が具現化した異世界」こと「謎迷宮」の探索に挑む……というのが一連の流れです。

探索とはいってもRPGのような複雑な迷路にはなっておらず、実質ここは一本道。ただし、要所要所で事件にまつわる推理の開示とミニゲームを要求されて、正しい答えを導きだせたら先に進めます。

迷宮内ではほぼイベント進行が貫かれており、どの章でも趣向を凝らした演出と会話が矢継ぎ早に展開されて、仲間たちのおしゃべりを聞いてるだけでもにぎやかで楽しい。次から次へとイベントが進行し、事件の真相に近づいていく緊張感もありました。

一方で、個人的にはこの謎迷宮の存在がこのゲームの評価を難しくしている点だなと思ってまして……長くなりますがつらつら書いていきます。

まずゲーム難易度における謎迷宮の貢献について。

実は、本作においてはプレイヤーは事件のすべてを推理する必要はなく、なんなら迷宮内で繰り出されるミニゲームをぽちぽちしていれば、プレイヤー側に答えがなくてもいい感じにキャラクターたちが情報を整理して進行してくれる。そういった誘導システムが、この謎迷宮システムの根本にあるんですよね。

これ自体は、多くのミステリーゲームが四苦八苦している「ゲーム性と推理ものの融合」の試行錯誤の一端であるという理解です。

あまりにも純粋な推理だけで勝負させると、クリアできないプレイヤーがでてきてしまうし、ヒントを出し過ぎてもゲーム性として物足りない。そこで本作では「ちょっとしたミニゲームをクリアさせることで進行させる」という手段を取ってる。

実はこの構造、過去作ダンガンロンパにあった「学級裁判」システムにおいてもほぼ同じです。

同級生たちとの会話をベースに事件のあらましを振り返り、時に真相そっちのけて紛糾しそうになる場の空気をミニゲームをクリアすることで喝破し、全体の議論を進展させていくのが「学級裁判」システムでした。

一方のレインコードでは、ゲーム的推理行為の表れとしてダンジョン探索風の演出を搭載したことで、物語的にも順序だてて情報を出すことができるし、かなりスムーズに謎要素を片づけられる構造になってると感じました。この謎迷宮システムを使うだけで、同じミステリートリックでもかなり難易度下がるんじゃないかなと思うくらいに。

この点が「わかりやすくて良い」と思えるところもあれば、「丁寧すぎてミステリー要素に歯ごたえが感じられない」と思うところも正直ある。特に序盤~中盤は後者の印象が強かったかな~。個人的にはもうワンランク上の推理設計でもよかったんじゃないか、と感じています。

そしてこの謎迷宮システム、ゲームシステム以外にストーリー面でも腑に落ちない点があります。

謎迷宮というシステムの作中における機能とは、迷宮を突破した直後には現実世界で真犯人が死ぬ……というもの。

さらに、謎迷宮には主人公とその仲間たちが参加できるだけで、迷宮内の人物たちは現実世界の人物をベースにしただけの別人だし、仮に真相を突き止めても主人公と死に神ちゃん以外は謎迷宮内での記憶をとどめていられない。

これで何が起きるかというと、どれだけ探偵役が犯行を明らかにして犯人を突き止めても、その当の犯人さえ現実世界で「自分の犯行が誰かにばれてしまった」ことを知らないままに絶命するし、迷宮内での出来事や得た情報は主人公と死に神ちゃん以外は誰も覚えてはいられない(あとから教えることは可能)

それは、悪しき犯罪を突き止める行為として意味があるのか…? 一般的に、凶悪犯罪の犯人が公的な場で供述もせずに死んでしまうのは、それこそ「迷宮入り」なのでは?

あとシンプルに、ミステリーものの展開として、「探偵が犯行と犯人を暴き、犯人がそれに狼狽え、周囲の人間がそれらを見て探偵への評価を上げる」という定番のカタルシスが起きないので、普通に盛り上がりに欠ける。

一応、周囲の人間がなぜかこっちを見直す展開はあるけど、「むしろなんで? 覚えてないのに?」と思ってしまって腑に落ちない。

まあ仕置き人よろしく「人知れず悪を裁く」展開もあるじゃないかと考えても、次々に人を殺して回る連続殺人犯でもなく、事情があってこの事件だけ起こした更生の余地が全然ありそうな犯人でさえ片っ端から殺してしまうので、謎迷宮の殺人機能と閉鎖性はより後味悪くしてないかと。

一応、舞台になってるカナイ区ではすでに公平な公権力というものが機能しておらず、横暴な権力により市民は一方的に断罪され、たとえ確実な真実をつきだしても握りつぶされるので、じゃあもうこっちが突き止めて殺すしかないじゃん、という建付けはあるんです。

でも主人公は別に「この手を汚してでも事件を暴く!」というタイプでは全然ないんですよ。人が死んだことに対して、いたって普通の罪悪感がわく朴訥なキャラクターです。

そういう性格の人間がこのシステムを使わざるを得ない状況に陥り、間接的に殺生を繰り返すわりにそこへの葛藤が軽く、どうにも物語的にこの観点が重視されているとはいいがたい……。

物語の中で「真実を暴くことの暴力性」に苦悩する展開がありますが、いやー、その暴力性の何割かは「謎迷宮による殺人機能」がなかったら存在しなかったんでは。

現実世界の犯人を生存させたままなんらかの更生を促すような仕組みだったら、その悩みもう少し軽かったよと考えてしまって、展開に気持ちが乗り切れないとこが正直ありました。

一回くらい葛藤の末に心底思い詰めて、「もうこんな力は絶対に使わない!」と謎迷宮の能力から本気で逃げ出す……みたいな展開があっても良かったんじゃないかな。

さらに各章を追っていくと「別にこれ、主人公が謎迷宮にいかなくても、この状況自体は解決してましたよね??」という展開が何度かある。

謎迷宮で犯人を突き止めて現実世界に戻ったら、すでに現実世界で別人が犯人を現行犯として捕えてました展開が顔を出すので、謎迷宮、マジで必要だったかな……? と思わずにいられないわけで。

最終章でようやく謎迷宮と犯人がつながって物語的オチが付きましたが、この観点からいえばそこはもっと劇的に取り上げてほしかったな。

結果的に行きついた「謎迷宮は使いつつ、犯人は死なず、現実世界で罪を贖っていく」という視点が、本来この「ミステリーと謎迷宮」の関係性に必要な着地点だったんじゃないか。

この辺りを整理しないと、「謎迷宮攻略というゲーム性と、ミステリーを読み解く楽しさ」、つまりは「プレイヤーの頑張りと物語の展開」と連動しないで空回りし続ける気がします。それではゲーム内物語の盛り上がりが、なかなか発生し難いんじゃないかな。

これは作品内における間接的な殺人行為を倫理的に許容できるかという話ではなく、ゲームプレイヤーのプレイ行為に対するゲームからのご褒美という「目の前にあるゲームを遊ぶ楽しさ」に関係する要素だと感じています。

もろもろ踏まえて実際にエンディングまでみて振り返ると、自分からすると近いけど微妙にずれたとこに結論が着地したように感じました。

「迷宮を解放しても死者を出さない」展開は良いとしても、そこに対して「今度こそ死者が出なくてよかった!」という喜び方は作中ではしないんだよなと。

あえていうなら、物語として完全無欠のハッピーエンドではないのはこれまでの精算ともいえますが、でも別に、今指摘した点の罪と報いをキャラクターたちが強く感じてそうなっていくわけじゃないしな~。どこまでもかみ合ってなさがある……。

「迷宮入り事件を解決するための謎迷宮システム」という発想は面白いし、推理ゲームのシステムとしての丁寧さは一定数評価できるものの、一方で物語や作中展開とこれらのアイデアがうまくかみ合ってるかというと、疑問が残る塩梅に感じました。

それ以外に遊んでいて感じた難点としては、ゲームの進行ルールが細かく変わること。

「プレイヤーがボタンを操作して次に進めるゲーム的展開」と「自動でメッセージが進行してプレイヤーがテキストを贈る必要がないムービー展開」が、めっちゃくちゃ細かく入り乱れる。

さらにQTEを採用しているので、プレイ中は「今この画面には操作が必要なのか、不要なのか? いつどういうときに操作が必要なのか?」が全然整理されずにめちゃくちゃ困る。

結果、「ボタン押しても進行しないな…あっムービーだった」とか「じっとして進行しないな…あっここ操作必要なのか」が、数分おきに入れ替わってめちゃくちゃ混乱する。

緊迫するシーンどころか日常パートでもこれが起きる。なんかそこは、できるだけ、整理して、操作性は1シーンで統一していただけると、助かる……。

つらつら書いてましたが、粗削りさがあるのは確かですが、キャラクターの良さと終盤の盛り上がり、そしてラストの苦い爽やかさは非常に好感が持てました。

ストーリー序盤、特に1~3章あたりは面白いけれどインパクトは弱く感じていたんですよね。ダンガンロンパにあった「同級生の誰かが殺人犯であり被害者のデスゲーム」状況から生まれる濃いドラマとの比較もあったかも。

ただ、終盤まできてみると被害と加害が入れ替わる複雑な状況が展開されて、「なるほど、これはデスゲームベースのダンガンロンパで描けない境地だな」と理解できる。

重苦しい真実も歪な世界をこのまま愛して、少しでも世界をよくするために歩き出す。そういう少し大人っぽい味わいはこの作品ならではの魅力に思いました。

あとはなにより、主演である福原かつみさんと鈴代紗弓さんの熱演が素晴らしかった。

ダンガンロンパでは「え!?この人がこの役!?」と驚くほどのベテランを主人公に起用する伝統がある中で、レインコードでは若手に類するお二人が主人公とヒロインを演じて、しかもどっちもめちゃくちゃ複雑で難しいキャラクターをばっちり演じられていて、レインコードという作品がもつ良さはお二人の存在感があってのものだったと思います。いやーこれで売れてほしいなー。

次回作や関連作の展開も欲しい~。売れてくれ~。
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