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「徒花の妖精姫」あとがき

コミティア124が終了しましたね。当日お立ち寄りいただいた方、お声がけいただいた方々、本当にありがとうございました。

昨年には出すはずだった本が準備号になっていまい「来年5月に完全版だします!」と宣言した手前、今日に間に合わせないと意味ない!と、なんとかやってこれました。書いてる最中は自分でも頑張っていたと思うものの、いま現物を前に「ああすればよかった、こうすればよかった」とか考えてしまうんですが、それは次の機会に反映していこうと思います。

で、作品品質とは違うもののやり残したことの一つとして、本の中に「あとがき」を入れられなかったんですね。考え方はいろいろでしょうけど、作品の補助線として読み物があるといいかなあと過去作には極力いれていたんですが、今回はまるっと収録できず。

そういうわけで「徒花の妖精姫」のあとがき書きます。読んだこと前提に何でも話しますが、読んだ後に読むもよし、読む前に頭に入れておくもよし。お好きにお楽しみください。


オリジナル同人誌をだすようになった経緯は以前書いてまして(はじめた話。)、この時は1作終わらせてその経験を生かしてもう1作書いてみる、という流れでした。

書くようになった経緯はそんな流れなんですが、本をつくるにあたって最初に考えたのは「前がシリーズ化して冊数が増えたから、1冊でさくっとまとまったもの。40ページくらい」でした。結果は本文だけで120ページくらいになってるんだから最終的に全負けです。

フォーマットは決まった(失敗したけど)ので、次はネタ決めです。

これも「前が1対多の構造だったから、1対1の構造にしたい。いわゆる固定カプ」と考えました。前作でもサブキャラでお嬢様とそれを溺愛する犬のコンビを出しましたが、あれが思ったより描いてて楽しくて、サブキャラなのであんまり出番ないけど、この感じをもっと長くさせたいなあという考えからでした。

そこまで考えて、脳内ストックから「外国から嫁ぎに来たけど、儀式の一環で遠く離れた土地に取り残されたお姫さまを、結婚相手の王子がエスコートする」というネタと合致させて、この物語の原型が出来ました。

この脳内ストックの本当の本当の元ネタは、寝ている間に見ている夢からでした。確か。

世界観は不思議と西洋時代劇ファンタジー、結婚式のために(なぜか)自動車に乗ってきた妖精族のお姫さまが、お城の前で突然自動車ごとぶん投げられて深い森の中に放り出され、高い高い樹(マナの樹みたいな)の上にぶら下がって身動きできない! というところに、結婚相手の悪魔族の王子がえっちらおっちら登ってきて助け出す、というもの。

妖精族の姫が森の奥で取り残されるだとかは、今も要素として残ってますね。悪魔族については角という形で残ってますけど、夢の中ではコウモリ翼もあって最後は飛んで帰るという展開があるくらいには、アクマアクマしてました。物語を整理するうちに「悪魔の一族」という要素はノイズになるかなあと、「角が生えてるだけの人たち」に留める程度に。

夢の中にはもう一ひねりがあって、その世界の妖精族は金属に近寄るとやけどしてしまう、という展開がありました。ゆえに自発的に自動車の中から逃げ出すことが難しく、誰かの助けを待たなければならない、と。

自分を傷つけかねない移動手段に押し込められ、儀式のためといって命の危険もある場所に放り出されたこと、王子と姫という政略結婚とはいえ大局的には晴れがましいもののはずなのに両国の片側もしくは結婚相手の片側にはやたら不利益が強い。それはなぜだ? ここ掘り下げたら面白いんちゃう? と、その点を発展させてこねくり回したものが、現在の「徒花の妖精姫」です。

金属に触れない設定は話を長くする上では不便だなと切りましたが、代わりに生まれたのが「身体の一部を献上する」です。そういう、取り返しのつかないものを、生まれた環境や状況から半ば強制的に奪われて、その先にあるものは何だろう? と考えながらこの物語が生まれました。

あんまり、作中人物の感情補填するのはダサいかなと思うんですが、この点だけ少し補足を入れたくて。

メリアにとっては生まれたときから、自国と決して良い関係とは言えない国に「両国の友好のため」にと身一つで嫁ぐことは決まっていて、そのためだけの生育も教育も受けて生きてきたのが彼女という人物です。彼女自身はその運命を特別悲観するわけでもなく「自分のできる範囲でがんばるぞい」くらいだったと想定しています。その延長線上の一つに身体パーツの献上もありました。もちろんいまの彼女の国でもそういう行為は一般的ではなく、髪などと違って不可逆のパーツなので、非人道的な行いであると認識されています。メリア当人には他者を労り、他人を傷つける行為は良くない事であるという倫理観は持っていますが、それでも自分の境遇については「そういうものだから」と整理していたと思います。彼女自身の生まれがそもそも「普通の人生」の枠外から始まっていて、彼女は自分はそういうものであると当たり前に受け入れていたので、改めて重ねられてもショックはなかった、のかなと。

彼女自身の境遇や内心はそんな感じで、それを見たどういう立場の人がどう反応したかは作中で描いたとおりです。あと、パーツそのものを取り戻したところで回復する様なものではないです(人の手足と同じです) それは誰もがわかったうえで、という前提で読み取っていただけたらな、と思います。

なんやら重いもの背負わせすぎたかなと思うんですが、そもそも「固定カプの本書きたいわ~」から始まったので、基本的には人と人の関係性の変化や、その関係における安定と不安定を楽しめる作品を心掛けています(時々描いてた小ネタ漫画群もこれらの設定前提に、ああいう関係として描写してます)

メリアもクルスも、「この二人でいること」自体が周囲の都合で決められた自由意志のない関係で、だからって二人ともその状況に異を唱える性格ではなく、不満がないわけじゃないけど、不幸になりたいわけじゃないし、どんな相手であっても折り合いをつけて何とかうまくやっていこうとする(うまくやっていける、ではない)人たちで、もし何も知らないで、何もしないでいるなら、良き恋人、良き夫婦になる二人だとも思います。

そんな二人の「でも、そうならなかった」という在り方が描けていたらいいなあ、と思っている次第です。


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南科そう(ナンカソウ)

デジタルにも「アナログ感」なるものを追い求めるオールドタイプヒューマン。

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